系(新塗装・仕様)

 上野口の165系は1963(昭和38)年に急行『佐渡』用として登場したのが嚆矢で、引続き信越線長野電化で急行『信州』および信州の運用間合で水上までの急行『ゆのさと』 (後の『ゆけむり』) が新前橋区165系で運用開始となりました。信越線方面は43-10改正で169系が登場して置き換わりましたが、165系は引続き新潟方面や東北線・高崎線・吾妻線・両毛線等の近距離急行に充当され60-3改正まで続きます。

 東北・上越新幹線上野開業となった60-3改正では165系急行は新幹線への置換えや一斉特急格上げに伴ない一気に消滅し、上野口での用途がなくなった165系は新潟地区や関東周辺閑散線区の普通列車・団体列車へ転用され、その後ほどなくして分割・民営化を迎えますが民営化後は今までの湘南色一辺倒から充当される列車に合わせた新塗装化やアコモ改善が進むようになりました。
 そのトップが民営化直後の1987(昭和62)年7月に登場した快速『ムーンライト』で翌年の63-3改正までに3編成が全て色違いで揃えられました。続いて1988(昭和63)年9月より新前橋の高崎モントレー色が、1989(平成元)年1月よりムーンライトの新塗装車が登場しています。


 模型は全車ともKATOの165系限定仕様車です。限定品であり修理が出来ず改造作業中破損させると一巻の終わりなので取扱いには神経を使います。また限定品なので一旦買い損ねると入手が極めて難しいモデルたちです。
 ということで購入当時予算オーバーは百も承知で無理して買った車両ばかり(笑)で、改造は座席と屋根が主体となります。
 製品はモントレー色の一部を除いてクハ・クモハ共通で先頭のカプラーはダミーなので増結用台車に交換してあります。



ではでは、まずは例によって真横からの形式写真です ↓



§1.上沼垂ムーンライト (1次製品・緑/赤6両セット)

 並行して走る関越道の高速夜行バスに対抗するため、国鉄時代の1986(昭和61)年6月より新宿−新潟間を結ぶ全席指定の快速『ムーンライト』の運転が始まりました。当初は14系客車3連の短い編成で同年7月までの期間限定で設定された臨時列車でした。好評で臨時ながらも以降も断続的ですが運転が継続され、翌1987(昭和62)年9月より電車化が行われそれに先立ち同年7〜8月にかけて専用車として登場したのがこの車両です。

 
翌年の青函トンネル開業を伴う63-3改正で『ムーンライト』は定期列車化され、その日中運用間合いを利用して新宿−黒磯間の全席指定の快速『フェアーウェイ』が新設されて3本目となる赤編成が登場しましたがこちらは若干塗分けラインが変更され、窓廻りは湘南色の黄かん色部分と同じ寸法に変更されています。

 1989(平成元)年1月に更に第4編成が登場しますがこちらは新塗装・車両更新車で落成し室内のグレードアップが図られています。1989年改造車として白地に窓周りがグレーとなったニューカラーに変更された更新車が同年末までに2本登場し、更新車が3本揃う1989年12月までに徐々に置き換えられ緑・茶色・赤編成はムーンライト運用から降りて新潟地区の急行『赤倉』専用車となりました。

 模型は1988(昭和63)年12月に発売された緑・赤の2編成6両セット (品番:10-308) です。モハ164は2両とも動力車でそれぞれ3両編成で独立して運転出来る車種構成で、価格は14、800円 (当時は消費税は課税されていない) でした。6両セットで動力車2両というのは当時ではなかなか贅沢に思えたものです。

 製品は1978(昭和53)年発売の153系 (ただし後の165・457系発売と同時にヘッド/テールライト部分のみマイナーチェンジ)、1981(昭和56)年発売の165系・457系と同じ部品構成で165系の1次製品に相当します。そのため車体は153系時代からの型流用で厳密にはタイフォンの形状が実車と異なります。クハ・クモハの前面はダミーカプラー、前面ガラスには白Hゴムの表現がない当時のKATO製急行型電車の標準的な構成です。中間の連結器はKATOの車両セットを中心に当時徐々に標準仕様になりつつあったKATOカプラーNに変更されていますが、カプラー本体は普通のアーノルトタイプに交換可能です。このムーンライトの最大の強みはJT顔負けの派手な塗装の列車が3連でまとまるという点で、有効長があまり長く取れない小形レイアウト向きの車両といえるかもしれません。


 確か関東・新潟地区限定で合計2000セットのみ発売された超稀少モデルで、購入するにも価格も競争率も高くて当時は予約にこぎつけるだけで大変で、私も見ているだけではどうにも耐え切れずエラい思いをして予約に走ったものです(笑)。結局東京・新宿のホビセンで最後の1セットが残っているという段階でギリギリ辛うじて予約が取れ、1989(昭和64)年1月7日 (!) に無事購入しています。当時は予約無しではまず入手不可能だった製品でした。90年代に入り中古車市場では一時的に途方もないほどのプレミアムがつきましたが、2002年に今度は塗装別に3両セットとして3色全色が発売され大暴落してしまいました。





 
クモハ165-131

 製品は車体の塗装以外は湘南色のクモハ165と同一で座席がクロスシートのままです。

 模型は車体の改造は行なっていませんが実車同様のアコモ改善車とするためクモハの両デッキ部分とサロ165の客室部分を切継ぎ、座席は乗務員室側を向くようにします。トイレ窓 (画像基準で手前側、反対側は製品のまま) を白で塗装し、製品ではHゴムが銀色なのでサンドペーパーで少しやすって明るめのグレー (灰色9号) で表現します。部品の取付はJR統一無線アンテナおよび床下トイレ側に銀河の汚物循環装置を、反対側に洗面所流し管を追加する他、クモハ限定で禁煙車マークを貼ります。
 屋根も特に改造を行なっておらず塗屋根化する程度です。





 
モハ164-854

 前述の通り6両セットに入っているモハ164は何れも動力車です。車体・屋根は旧仕様のモハ164-800後期形タイプを新規に登場させており、湘南色に先駆けての製品化です。

 改造は3形式の中で唯一車体に手を加えており、パンタ側の妻面に表現されている貫通扉は実車には存在しないので周辺に傷をつけぬようくり抜きます。車体以外では動力ユニットに一体でモールドされている座席のリクライニングシート化と塗屋根化の2点を施工しています。





 
クハ165-196

 こちらも後期形クハの屋根が新規に登場しました。車体は弄っておらず座席の切継ぎ・屋根の塗屋根化と汚物循環処理装置の追加を行なっています。座席はクモハの場合と同様乗務員室側を向くように切り継いでいます。

 前述の通り先頭車共通の仕様として製品の乗務員室側カプラーはダミーとなっています。他編成と併結可能とするために腕の長いTR69台車 (クモハ165はDT32) と交換しカプラーはTOMIX製TN密連を装着しています。





 
クモハ165-135

 車両の加工は↑のクモハ165-131と同じです。

 実車はムーンライト運用時に限りクモハ全車共通で座席の一部が女性専用席(20席)となる関係でシートカバーは淡いピンク色に変更されますが、模型は当時のフェアーウェイ運用時を基準にしているので全席が白で表現しています。
 参考までに緑・茶色・赤編成のシートカバーですがその後登場した第4編成以降の新塗装車とは異なり、座席の背もたれ上部全体を覆う形状になっています。模型でも旧塗装3編成の座席については上部全周に亘り白で塗装しており、後述の更新車との差別化を図っています。





 
モハ164-858

 ↑のモハ164-854と同じです。実車ではトイレは残されているので汚物循環処理装置を取り付けたいところですが、ダイキャストに孔を明けるという作業が必要であり模型では未設置としています。





 
クハ165-200

 ↑のクハ165-196と同じです。製品はクハ・クモハ全車ともJR特有の装備が何もない状態なのでJR統一無線アンテナと車体側面にJRマークを追加します。製品は緑・赤編成共通で窓ガラスは全て銀色表現なのでHゴム部分のみグレーに変更し白H仕様にします。JR東のATS-P導入開始前の1988年頃のスタイルをプロトタイプとしているため、クハ・クモハ共通でATS標記は『S』としています。

 また、緑/赤6両セットの先頭車全車共通で前面ガラスは白Hゴムモールド入りの改良品 (113・115系用でも使用可能) に交換しています。前面ガラス交換は嵌合いが非常に厳しく車体も部品も破損しやすいので交換作業は注意が必要です (どうやら必殺技があるらしいですが・・・)。



§2.上沼垂ムーンライト (2次製品・緑/赤/茶色 各3両セット)

 こちらは2002(平成14)年に発売された車体塗装別の3両セット (品番:10-448〜450) で1次製品からは多少進化しており、部品互換性はある程度残していますがヘッド/テールライトがLEDになり、それに伴ない車体が新仕様となり車体関係の部品構成が一部異なるので1997(平成9)年発売の165系800番台と同じ2次製品に区分されます。やはり前述の緑/赤セットと同様に湘南色165系の色違い品でありタイフォン形状が実車と異なります。価格は3両セット1組で9、000円 (+消費税5%)で、ムーンライトが発売される度に徐々に値上げをしています。

 緑/赤セットに比べて塗装は幾分シャープになっており、クハ・クモハのJRマークは当初より印刷済です。前面ガラスが白Hゴムモールド入りの改良品に変更されており、台車は中間連結部分のみKATOカプラーN装備の新仕様品に変更されています。
 こちらは茶色のみ購入しています。

 前述の6両セットの段階では茶色編成は発売されませんでした。茶色編成自体は実は緑/赤セット購入した影響をモロに受け、こちらも耐え切れずに1989(平成元)年2月に改造で製作しています。2002年の茶色セット購入時に前述の1989年製作の旧・茶色編成から座席だけを外して新・茶色編成にサルベージし、部品を取られてバラバラになった旧編成は湘南色車体に更新および新品の座席を購入してクロスシート化を行ない国鉄・湘南色仕様に改装しています。以下の3両は旧・茶色編成から座席パーツを横取りして組み込んでいます。
 余談ですが、車体載せ替えで使わなくなった旧・茶色編成の車体は直流急行型電車 (国鉄仕様) のページで紹介しているサハ164の改造製作用に回すといった芸の細かい部品転用を行っています。

 参考までに旧・茶色編成の改造は1988(昭和63)年1月発売NゲージマガジンNo.8のムーンライト茶色165系の記事を全面的に参考にしており、塗料はGMのNo.2ぶどう色2号、Mr.カラーのNo.39ダークイエロー、同No.43ウッドブラウンを使用しています。





 
クモハ165-132

 1次製品との最大の違いはヘッド/テールライトがLEDに変更となった点です。座席は前述の通り1989年に改造で製作した旧・茶色編成からサルベージしており、製品のLEDライトはそのままでは使用出来ないので在来の電球式に交換しています。
 よって座席周辺の部品構成は1次製品と同一となっています。

 茶色編成全車共通で台車は他車と扱いを統一する関係で旧仕様のDT32 (クハはTR69) に交換し、TOMIX製TNカプラー密連に変更しています。





 
モハ164-855

 モハ164-854と同様塗屋根にします。パンタ側妻面に表現されている貫通扉は実車には存在しないので丁寧にくり抜きます。
 製品は前述の通りKATOカプラーNの新仕様台車となっているので、予備品でストックしてあったアーノルトタイプのDT32に交換し、TN密連を装着しています。





 クハ165-197

 車体関係は改造を行なっておらず、前述の座席の交換・JR無線アンテナ取付と汚物循環処理装置の追加、台車の交換を行なっています。

 2017年1月に緑・赤・茶色のクハ・クモハ全車 (6両) を対象にヘッド/テールライトユニットを改造してLED化したもの (455系東北色のページで述べているのと同じ物です) に換装しています。




 §3.上沼垂ムーンライト (1次製品・新塗装3両セット)

 前述の通りムーンライト用165系は編成ごとに色が異なる3編成を充当していましたが、1989(平成元)年1月に登場した第4編成は80年代後半から90年代にかけて流行した白ベースの塗装に変更され (これは鉄道のみならず自動車の分野でも排気量1500〜2500ccクラスの乗用車を中心に白いクルマが流行した) 、同時に車両更新 (※) が併施された一見新車にも見える165系更新車を充当するようになりました。
 第4編成はピンク(赤13号)と黄緑色のピンストライプが特徴でしたが、同年9月に登場した第5編成以降の車両は白ベースでありながらグレーの窓廻りに黄緑色とレモンイエローのラインが配された斬新なカラーリングに変更されました。先に登場した第4編成も後に第5編成以降の塗色に揃えられ、この塗色は1990年12月までに6本が登場し165系終焉となる2003年まで活躍しました。ムーンライト用として改造された編成は赤倉転用車を含め全部で9本になります。

 室内はムーンライト車全車共通で当時の特急型グリーン車から捻出したリクライニングシートを流用し、モケットを張り替えたものを使用しています。シートピッチは特急・急行グリーン車と同じです。私は1989(平成元)年11月に快速フェアーウェイ号で初めて乗車しましたが、これが快速列車かと思うほど豪華な造りでカルチャーショックを覚えたほどです。



 (※) 車両更新・・・国鉄時代から行なわれていた特別保全工事 (2全検程度の延命化改造) を更に深度化したもので、4全検(約20年)程度の延命を目標とした改造工事で民営化後の1988年から始まった

 内容は車体外板の徹底修繕・張替・塗装全剥離・再塗装、電装・艤装の取替、塗屋根化、客扉取替、室内化粧板取替、座席モケット交換、床材更新、窓枠取替などである


 運転開始当初は3連が基本だったムーンライトであるが、1990年3月改正以降は週末を中心に6連で運転される日が多くなり、1991〜95年は試験的に村上行・新井行 (長岡で分割併合) の2階建て列車が登場し1994〜1996年頃には9両編成も出現した

 画像はムーンライトの間合いで運転された新宿−黒磯間の快速フェアーウェイで、第4編成のA1と第5編成のM 3 (共に当時) の混色編成である  当時第4編成は赤倉専用車だったが頻繁にムーンライト運用に入っていた
 ピンクと黄緑が特徴の第4編成も他のムーンライト車に合わせるため1991(平成3)年4月に第5編成以降と同じ塗装に揃えられた

  1990.11.-3   黒磯駅


 模型は1992(平成4)年6月に発売された製品 (品番:10-309) で165系1次製品に相当し、第5編成以降の新塗装車がプロトタイプです。1997年発売のヘッド/テールがLED化される前の製品なのでライトは電球で車体のカラーリング以外は1次製品とほぼ同じです。座席はやはりクロスシートのままです。モハ164はまだ湘南色の800番台が発売される前であり、普通屋根の0番台がプロトタイプとなっています。価格は限定品ということもあり3両セット1組で8、500円 (+消費税3%) と当時としては少々高めの設定となっています。製品は4両用のトレインケースに入った状態で発売されましたがトレインケース本体の色はKATO標準の緑ではなく赤となっており、他製品とは完全に差別化を図っていた珍しい例です。

 こちらも座席を切り継いでアコモ改善車仕様にしますが車両更新車なので室内のカラースキームを変更しています。製品はこれもJR仕様特有の装備が一切ない状態なので先頭車全車を対象に屋根にJR統一無線アンテナの取付と車体側面に緑色のJRマークを転写し、Hゴムは全て黒に変更しています。

 以下に述べる新塗装車グループも茶色編成の場合と同じく製品が発売される前の1989〜1990年にかけて私が改造・塗替で登場させており、1992年の新塗装車発売時に必要数購入して車体だけ転用して載せ替えを行なう車体更新改造を行っています。車体を取られて部品だけになった165系は新たに湘南色の車体を購入して湘南色165系としてデビューを遂げています。
 そのため、以下に紹介する新塗装車6両 (実際は12両所有している) は車体以外は1989〜90年にかけて改造製作した部品をそっくり転用しています。




 
クモハ165-137

 房総各線急行電車化名義で昭和43年度第4次債務により登場したグループ (新製配置は幕張電車区、57-11改正で新潟に転属) で、165系後期形に属し新製時から冷房車で落成した車両です。後期形なので通風器は全部で6個で、タイフォンは前述のムーンライト3色と同様フタ付きの耐寒型となっています。

 模型は車体・屋根は特に改造する部分はありませんが、製品はクハ・クモハ全車共通で何故かJRマークがありません。当時発売されていたJRマークインレタの中から緑色を使用し、両側面の便洗面所窓の下に小さいサイズのものを転写します。
 また、製品の前面ガラスはデフロスタおよび白Hゴムのモールドがある改良品が装着されていますが、車両更新車なのでムーンライト新塗装車および以下に述べる高崎モントレー全車共通でHゴム部分は全て黒に変更します。前面ガラスはグレーのHゴム部分を、窓ガラスは銀色のスタンプをサンドペーパーでやすって表面を荒らしてからHゴム部分をそれぞれ黒の油性フェルトペンでなぞります。
 前述の3編成と同様後期形なのでタイフォンの形状が異なりますが、細かい部分でありキレイに改造するのは難しいでのそのままにしてあります。
 クモハのみ客扉上部に禁煙車マークを貼ります。




 
モハ164-860

 前述の通り製品のモハ164は0番台がプロトタイプで、実車は0番台と800番台が半数ずつの在籍です。こちらも後期形に属するグループで、通風器は全部で4個です。
 製品は当初よりゴムタイヤが装着されていません。

 模型はモハ164-0とパノラマEXPアルプスのモロ164の低屋根部を切り継いでおり、通風器のモールドは一旦全て撤去し別の屋根から切り出した押込型通風器を4個取り付けます。
 車体は低屋根に合わせて非トイレ側の妻面垂木部分を現物合わせで平らになるよう削り、取付ける屋根に合わせて切り口を45°に削って整形します。





 
クハ165-203

 ↑のクモハ165-137と同様新製時から冷房車として落成したグループで、屋根の通風器は両端の2個を撤去し後期形タイプにします。

 車体関係の改造はありませんが、↑のクモハ165-137の場合と同様汚物循環処理装置の追加を行ない便洗面所窓下に緑のJRマークを転写します。





 
クモハ165-101

 こちらはムーンライト車では少数派の初期形のグループで、トイレ側屋根に通風器を1個追加します。初期形なのでタイフォン形状は製品のままでも実車通りとなります。

 実車は国鉄時代に運転席側の箱型通風器を撤去した異端車 (生粋の新潟車によく見られる) ですが模型では取り敢えずそのままにしてあります。





 
モハ164-65

 こちらもムーンライト車では少数派である初期車・一般屋根のタイプで、加工は座席・塗屋根化・黒Hゴム化の3点です。
 比較的簡単にまとまります。





 
クハ165-99

 これも初期車のグループで、塗屋根化・黒Hゴム化・汚物循環処理装置追加を行っています。
 ムーンライト新塗装クハ・クモハ全車共通でATS標記は『SP』としています。


 参考までに、新潟・上沼垂の165系では先頭車の幌はクモハに付きます・・・が、実際実物を見てみるとヘッドマーク取付が関係しているのかどうかは不明ですが私が見た限りでは先頭に出ているクモハは幌が付いていない日が圧倒的に多く、模型では幌があるとヘッドマークが目立たなくなるという理由で先頭部の幌の取付はムーンライト車クモハ165全車共通で省略しています。



 
§4.新前橋モントレー (2次製品・6両セット)

 60-3改正以降は両毛線・吾妻線等の関東周辺の閑散線区ローカルに転用され、同時に臨時列車・団体列車等の波動輸送に充当されるケースが増えていきました。このうち団体列車に充当される分を中心に車両更新工事が行なわれる事となり、1988(昭和63)年9月に登場し同時に新塗装化されました。1990年5月までに11本33両+1両 (この1両とはクハ165-57で、車両更新は未施工で塗分けは若干異なる) の合計34両に施工されています。
 1992(平成4)年の成田線踏切事故の反省で1972年以前に製造された近郊形・急行形電車の先頭車を対象にした前面強化工事 (1973年以降の増備車は新製時より前面強化仕様で製造) が施工され、モントレー車も全車が改造対象とされクハ・クモハの前面にステンレス地剥き出しの前面補強車 (いわゆる鉄仮面) が登場しました。同時にヘッドライトがシールドビーム化されています。1993年春〜同年12月にかけて大宮工場ではなく新前橋電車区において集中的に工事が行なわれましたが工期短縮のため補強部分の塗装は青とピンクの帯以外は行なわなかったようで、先頭部のみステンレスギラギラのスタイルは誰が見ても異様な雰囲気を醸し出していたものです。後の入場に際し前面塗装が行なわれ、わずか数年間の暫定的なスタイルでした。

 参考までに『モントレー』とはスペイン語で『3つの山』の意味で、新前橋電車区 (現・高崎車両センター) のお膝元である群馬県内にそびえ立つ上毛三山 (榛名山・赤城山・妙義山) に因んだものです。
 白ベースに青とピンクのラインが入るいかにも当時のJR東日本らしい165系とは思えぬかなり派手な塗装が特徴となっています。更新対象車は当時の新前橋区所属車のうちハイナンバー車を中心に選んで行なわれています。

 模型は1997(平成9)年6月に発売された限定品6両セット (品番:10-350) で、1988年発売のムーンライト緑/赤セットの場合とは異なり1セット内に動力車は1両です。ヘッド/テールライトは電球ですが、車体・座席関係の部品構成は前述のムーンライト茶色と同じなので165系2次製品に区分されます。この直後に165系低屋根湘南色が同じ仕様で発売されましたが、ヘッド/テールライトはLEDに変更されたのでこのモントレー165系は車体・座席が新仕様でありながらライトが電球式の過度的な製品です。価格は13、800円 (+消費税5%) でした。

 製品は実車が全てシールドビーム化・前面塗装が施された1996(平成8)年以降のスタイルを模型化しています。TOMIXからもリリースされていますがこちらはヘッドライトがデカ目で差別化を図っているようです。





 
クモハ165-88

 165系としては初期形のグループに分類される車両です。
 模型は初期形クモハ仕様の屋根が新規に登場しました。JRマークは印刷済で車体に関しては特に手を加える箇所がなく、黒Hゴム化・屋根の塗屋根化と床下の汚物循環処理装置の取付、禁煙車マークの追加が中心となります。

 幌は上野駅基準で下り向き側に取り付けます。新前橋の165系は横軽通過対策で逆向き配置なのでクモハの場合は1エンド側 (トイレ側) に取り付けます。この車両も前述のムーンライトと同様にヘッド/テールライトのLED化改造を行なっています。





 
モハ164-52

 屋根はマイナーチェンジが行なわれた153系 (1994年発売の湘南色低運車) と同じものに変更されています。従来品と比較してパンタグラフの位置が修正され、約3mmほど中央に寄っています。
 実車は更新時に便・洗面所が撤去されただの空間となっていますので汚物循環処理装置・洗面所流し管は付きません。模型は塗屋根化・黒Hゴム化のみとなります。





 
クハ165-90

 車体・屋根は特に手を加える箇所がなく、黒Hゴム化・塗屋根化・汚物循環処理装置追加が中心です。
 ムーンライト車・仙台の東北色455系等とは異なりモントレー全車共通で座席の改造は不要です。また、ムーンライト車とは異なりHM取付等の支障がないことからクハ165モントレー全車を対象に前面に幌を取り付けています。

 実車では1993年にいきなり登場した前述の鉄仮面を作ろうかと計画した時期があったのですが、限定生産品であり流石にもったいなくて鉄仮面化は見送っています。



 
改造といっても大したものではないです・・・

 製品がある程度作りこまれている事もあり車体関係は改造するところがありません、っていうか限定品なので弄るのがあまりにも恐れ多いというのが正直なところですが・・・(笑)


 
1.ムーンライトの座席の改造 (クハ165・クモハ165)






 外から窓越しにモロに見えるだけにさすがにこれだけは無視するわけにはいかないです



 ムーンライトのモハ164は全車が動力車なので、座席の切継ぎ改造はクハ165・クモハ165に限定されます。
 
 実車調査は快速フェアーウェイや急行赤倉の乗車時に行ないました。

 改造は概ね右に示す通りでクハ・クモハ共通です。改造にあたり位置関係は床板に延びる4箇所のツメの場所が基準になります。画像は上がサロ165のものを、下は改造後のもので、配色は新塗装車 (車両更新車) 仕様です。



2.ムーンライトの座席の改造 (モハ164)


 モハ164は動力車なので動力ユニット上に表現されているクロスシートの背もたれ部を撤去し、リクライニングシートの上側だけを切り取って接着します。

 シートピッチは必然的にグリーン車と同一になります。また、中央部分のみ座席の表現を省略していますが、これはノイズキャンセラー用の磁器コンデンサーを搭載する場合を想定しているためです。



 かつてはKATO・TOMIX製を問わず全ての動力車に対し磁器コンデンサが標準装備でしたが、後にモータ側を改良したようで80年代中頃よりコンデンサの搭載は省略されています。

 磁器コンデンサが付いていた動力からコンデンサを外して走らせるとテレビの音声にノイズが乗りザラザラという雑音が聞こえたものですが今ではすっかり過去の話となりました。
    <参考>


    磁器コンデンサを搭載している例  →

     (KATO製モハ414-100    1985年8月購入)



  この動力ユニットは今まで特に修理・部品交換等の修繕は行なっておらず、もう30年選手であるが現役で使用している




3.モハ164妻面の貫通扉

 ↑でも述べていますが、製品のモハ164-800パンタ側妻面には実車には存在しないはずの貫通扉が表現されています。

 低屋根であり妻面の強度確保のためとワタシは勝手にそう推測してますが、やはり実物にはないのでどうしても気になります。
 製品は限定品であり改造に当たっては失敗が許されず、散々悩んだ挙句結局撤去することにしました。

 加工にあたっては周辺に傷が付かないよう慎重に行ないます。四隅にピンバイスで慎重に孔明けを行ない位置決めをしてから周辺をカッターで切り込んでいくように徐々にくり抜いていきます。特に幌枠の下端部は強度的に相当厳しくなります。
 画像は左は加工後、右が加工前になります。強度確保の意味はあまりないように思いますが、幌を付けておきます。





 
4.ヘッド/テールライトのLED化

 455系東北色に引続き2017年1月より製品のライトユニットを改造しLED化を行ないました。LEDのアンペア数や輝度などの基本スペックは455系と同じ仕様です。

 デカ目の場合は効果抜群でしたが、165系新塗装車の場合は改造対象にモントレー車が含まれておりレンズ径の細いシールドビーム車に施工するのは今回初なので、効果のほどはどうなのか?という試作的な意味も持ち合わせています。
 ↓の画像は動力車非連結の状態で先頭車のみ通電させている状態です。走行時は電球ではモータの方で電力を喰われるのか単独で通電させる時よりもかなり暗くなりますが、LEDでは電球ほどの影響はありません。

 LEDは超高輝度タイプで30mAのものを使用しており、チップ抵抗もそれなりの大容量のものを実装しているので発熱対策だけは行なった方がいいかと思います。

デカ目ばかりでなくシールドビーム車でも効果は著しい

この明るさは電球ではマネできません
 165系1次製品用と2次製品用とではLEDの足の這わせ方が異なる  左側が1次製品、右側が2次製品用である

 LEDはヘッドライト側は電球色、テール側は白色を使用している


 
5.各部の配色・色差し





 まず貫通扉ですが、緑/茶色/赤の特別保全工事車グループ (特別保全工事はムーンライト化改造時に同時に施工) と、更新車では1989(平成元)年1月に当時の新津車両所で更新されたムーンライト第4編成だけが塗装仕様で、他はモントレーを含め全てステンレス地無塗装となっています。



 前者はスカ色のクリーム1号で表現し、後者の場合はまずガラス部分周辺を銀色で塗装し、乾いてからメタリックテープを貼ってガラス部分をくり抜きます。
 座席は実車の仕様の違いによって右の画像のように塗装しています。





 165系新塗装車はKATO製ではすべて限定仕様車のため入手がむずかしく改造するのもかなりの勇気が必要です。決断できなければ諦める方がいいかもしれません(笑)
 ムーンライト車ですが、特に1989年以降に登場した更新車は各車で外観・仕様が少しずつ異なるので、実車をよく研究して(実車は2003年になくなってしまいましたが)自分の車両にして欲しいと思います。

 製作に当たって参考になる文献を以下に紹介しておきます。

  ・鉄道ファン 1989-12  JRニューカラー・オールガイド(特集記事)   交友社  1989
  ・Nゲージマガジン No.8  〜テープだけのマスキング〜 (165系ムーンライト茶色)  機芸出版社 1988
  ・Nゲージマガジン No.30  〜ムーンライトのバリエーション〜 (ムーンライト7編成)  機芸出版社  1998


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