画像は115系300番台(KATO製の改造車)に装着した例



 電球搭載車の白LED化改造(室内灯編)


 元来室内灯は電球で照明する製品しかなかったのですが(当たり前ですが)、最近になって白LEDが安価になってきて白LEDによる室内灯が各メーカーから発売されるようになり、実車の蛍光灯による照明のイメージがついに鉄道模型でも再現可能になりました。


 その白LEDの室内灯ですが、いざ買ってきて組込んでみると・・・・・・今度は今まで当然だった電球方式が急激に旧式化し始めました。

 ワタシとしてはあまりにも画期的すぎて、現在電球式の室内灯取付車を全てLED化したくなってきました。ところが市販品はTOMIX製は1両分が924円、KATO製でも735円(税込)・・・電球式に比べかなり高価で、さすがにホイホイ買ってきて改造するわけにもいきません。

 そこで思いついたのが、ここでご紹介する白LED室内灯の自作です。製作は一旦始めれば手が慣れてきて量産が可能ですが、ある程度の電気回路の基本知識が必要です(勿論、ハンダこてが扱える事が大前提ですが)。
 また、製作に当たっては車内に無理なく組込める事が絶対条件となり、とにかく小さく纏めることが重要です。結果的には基板とブリッジダイオードの大きさに左右されることになります。

 詳細は下表にまとめてみました。本当は抵抗を使わずにCRD(定電流ダイオード)を使用すると発熱を大幅に低減出来て完璧なのですが、コストの面で抵抗を採用しました。その結果、1個当たりの部品代は約35円程度と、とってもおトクな改造になっています(笑)。

 なお、この一連の作業は新規の改造ではなく、あくまでも電球仕様車の白LED化という定義で実施しています。


 改造の際、ハンダこてが原因の
ヤケドと周辺の物を燃やさないよう充分ご注意ください

 ・・・ワタシは熱くなっていたハンダこての先っちょをティッシュで拭いただけでティッシュから火が出ました(怖)



 〜用意するもの〜

各パーツの概要 詳細画像 価格など
1.基板

基板寸法は10mm×10mm、孔は8個あるタイプです。
孔はいっぱいあいている方が細かい位置決めがしやすくなりますが、その分孔の大きさが小さくなり部品の実装が難しくなります。
75枚入りで750円

(10円/枚)
2.ブリッジダイオード

一番の要となる部品で、7.5mm×6mm×2mmです。
入力側は〜の記号(交流電源の意味)があり、出力側は+・−の極性があります。
ブリッジダイオードが不足した場合、スイッチングダイオード4個を使った代替自作でも対応可能です。
7個入りで100円

(≒14.3円/個)
3.チップ白LED(高輝度 600mcd)

とにかくゴミみたいに小さい部品で、2.4mm×1.2mm×0.8mmです。
市販品は画像のようにシートに包装された状態で発売されています。
ピンセット等でつまむとすぐ飛んで行ってしまいます。

20個入りで200円

(10円/個)
4.抵抗

LEDへの過電流を防ぐための部品で270〜300Ω、1/4Wのものを使用しています。
(画像は10kΩのもの)
100個入りで100円

(1円/個)
その他必要な物

ハンダ ・ ハンダこて ・ 必要に応じてペースト ・ あと、ハンダこてを使うので電気代(笑)



※パーツの価格は秋葉原の秋○電子(JR秋葉原駅から徒歩5分、2010〜2011年現在)でのデータです。
 また、各部品の寸法・性能は添付されている諸元表を参照ください。




 まずは回路の説明です。回路は図に示すように実に単純です。抵抗の位置はブリッジダイオードの前でも後ろでもどちらでも問題ないと思います。当初は図の通り抵抗はブリッジダイオードの後ろに持ってくる予定でしたが、スペースの関係や作業性を考慮しダイオードの前に配置する仕様に落ち着きました。


 図では電源の表示は直流電源で画いていますが、進行方向により極性が変わるので交流電源で画いた方が正解かもしれません。点線内はブリッジダイオードを示します。

 LEDには極性があるので進行方向が変わって電極が反対になっても一定方向に電流を流す必要がありブリッジダイオードを使用します。入力側はその都度+と−が入れ替わりますが、出力側は必ず+と−が固定され電流の流れる方向が決まります。


 さて回路に抵抗を入れる理由ですが、基本的にLEDの耐電圧は概ね4V程度で、最大12Vの電圧をかける鉄道模型ではそのままでは使用できず何らかの過電圧対策が必要になります。

 そこで今回はコストを下げるという理由で抵抗を採用しました。もっとも最近ではCRDという優れものが出てきてこちらを採用する方が確実で一般的なのですが、CRDは1個につき100円程度と高価なので今回量産するという事もあり抵抗制御(?!)となっています。抵抗値はワタシのオームの法則を変形させたつたない計算式・定数設定により270Ωを標準としましたが、LEDの寿命等を考慮するなら300Ωを使ったほうが確実です。ワット数は1/4Wを採用しました。明るさは300Ωを使用しても市販品と大差ないです。

 また使用する白LEDは最初に3mmのLEDで試作してみましたが、なんだか市販品よりも大幅に暗くなるという結果になったので、作業がかなり煩雑になりますが市販品と同様チップLEDを採用しました。
 LED作動時の発熱ですが、電球よりは極端に少ないもののやはりLED・抵抗からの発熱は無視出来ませんので従来品と同様、アルミ箔による発熱対策は必要です。

 CRDと抵抗では根本的に特徴が異なり、CRDはどんな電圧下においても(勿論限度がありますが)電流はほぼ一定になるという最大の特徴を利用してモーターが回転を始めるよりも低い電圧から点灯させることが可能です。今回ワタシは抵抗との比較試験のため10mACRDを購入し比較検討を行なっていますが、明るさは300Ω抵抗と大差なしでした。
 抵抗・CRDとも一長一短ですのでどちらを選ぶかはその人の好みによる部分が大きいかと思います。





 まずは基板にブリッジダイオードを組込みます。


 ブリッジダイオードの極性に注意し、画像基準で手前側に〜の記号が来るように基板に差し込みます。差し込んだ状態が上の部品です。基板に差し込んだら裏面にはみ出た端子は赤い矢印の向きに曲げます。

 つまり、入力側は画像基準で手前側に、出力側の端子は折り曲げたら直ちにチップ白LED側の端子とハンダで固定しますのでお互い内側に曲げます。基板上でダイオードがぐらつかない様に注意します。


 これで、端子を曲げた段階でブリッジダイオードが基板に仮固定される形になります。
 なお、ブリッジダイオードの端子はやわらかい金属で出来ているようなので同じ場所で何回も曲げたりしていると突然切断してしまいます。













 次に抵抗を組込みます。


 前述の基板のあいている部分に抵抗を実装します。抵抗は一方を孔に通して裏面側に貫いた後に真鍮線と接続してハンダ付け、もう一方はブリッジダイオードの入力側の片方と直接ハンダ付けして固定します。
 この時に集電用の2本の線を裏面側からハンダ付けして集電可能な構造に仕立てます。集電用の線は真鍮線でなければならない、というものではなく、KATOの床下に付いている台車集電板兼用の銅板を適当な長さに切断して使用してもOKです。
 また、抵抗はそのままでは線が長すぎるので適当な長さで切断します。


 真鍮線は実はパンタ付きモハの車体妻面の配管用としてストックしてあったもので、太さは強度が確保出来れば任意です。


 参考までにハンダ付け作業は作業台に両面テープを貼って基板を固定させながら行なっています。小さい部品なので片手で持ちながらの作業はまず無理だと思います。












 最後に裏側の様子です。


 前述の通り非常に小さなチップLEDを実装する作業です。チップLEDを掴む作業が出てきますが、ピンセットでつまむとすぐ何処かへ飛んで行ってしまいます。
 そこで思いついたのがツマヨウジの先に細く切り出した両面テープを巻き付けて、粘着力でチップLEDを掴んだり押さえたりする方法です。チップLEDがらみの作業は全てこの方法によっています。


 まずは反対面から飛び出たブリッジダイオードの端子ですが、先にLEDの端子が来る位置付近にハンダを流しておきます。

 次に白LEDの光る側を基板の外側に向くように(右の画像基準で手前側)してLEDをツマヨウジの先に付けたまま押さえてから先に流しておいたハンダの上にセットします。一番問題となるLEDの極性ですが、偶然にもこの位置で正解です。


 さて、最も煩雑なチップLEDのハンダ付け作業に入ります。先端にLEDを付けたツマヨウジを所定の位置に合わせて押さえたまま、もう片方の手でハンダこてを扱います。

白LEDの端子と先に流しておいたハンダを接触させながらハンダを熱で溶かすような要領でハンダこてを当ててチップLEDをハンダ付けします(これが一番肝心です)。

 これで作業は終了です。
ここで点灯試験を行ないます。通電した状態で逆転スイッチを何回も扱っていかなる場合においても点灯すればOKですが、点灯しない場合は原因の大部分がハンダこてを長時間当て過ぎてチップLEDが焼けたか、またはハンダ付け不十分のどちらかですので、後者が原因と思われる場合は再度ハンダを流して電気が流れるようにすればOKです。

 これでチップLEDによる照明ユニットが完成しました。いよいよ車両に取り付けます。



 車両への取付ですが、端子が真鍮線なのでそのままでは端子同士を接触させることが出来ず装着および点灯が出来ません。そこで、白LED化で余剰となった電球仕様の照明ユニットから電球とステンレス製の遮光板を外して裸になった白いパーツから上半分を除去したものをスペーサとして使用しています。
 これでも取付状態はなんとなくふわふわした感じでズレやすくなるので組立ての際照明ユニットをひっかけたりして動いたりしないよう注意が必要です。

あとは市販品の室内灯取付と要領は全く同じです。床板に取り付けたらLEDの光が天井に貼ったレンズに無駄なく届くよう基板の高さ調整を行ないます。






 忘れがちですが、抵抗やLEDからの発熱が無視出来ないので車体側に放熱用としてアルミ箔を貼る(かつてのKATO製電球仕様室内セットに付属していた粘着剤付のアルミ箔が使いやすい)等の発熱対策を施した方が無難です。



ここまで済んだら市販品と比べても明るさに関しては大差ない白LEDによる室内灯改造の完成です。






  〜最後に〜

 今回の室内灯ユニットの製作は電車・客車など編成単位で全車に取り付ける場合はとにかく数揃えることが必要です。私の場合は1回の製作につき10〜15個程度を1ロットとして複数回に分けて作りました。

 なるべく小さく作る事に重点を置いて製作したつもりですが実際装着して車両を組み立ててみると、やはりブリッジダイオードがちょっと大きめで窓からモロ見えてしまいます。特に通勤形・近郊形車両にその傾向が強く出ます。
 出来ればトイレ付きの車両を対象に絞って基板をなるべく見えなくするなどの対策が必要かもしれません。

 自作基板による白LED化ですが、実際は前述のような短所もありますが最大の長所はとにかく安く作れる、という事です。そんなに難しい内容ではないので興味のある方は是非とも挑戦していただきたいと思います。



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