常磐(快速)線103系


 1963(昭和38)年に山手線に登場した103系ですが、常磐快速線への投入は1968(昭和43)年から開始され唯一のエメラルドグリーン塗装が特徴です。
 国鉄時代は先頭車は全て低運形で占められており、59-2改正で常磐緩行線より1000番台が、また民営化後の63-3改正における15両化に伴い京浜東北線・山手線からATCクハがそれぞれ転入し、以後はこの状態が長く続きました。
 2002(平成14)年からは後継車であるE231系が登場し103系を次々に置き換えていき、2006(平成18)年3月のダイヤ改正で引退しました。

 模型では全車国鉄仕様となっており63-3改正で登場した15連に対応していません。種車はKATOの103系冷房車で、初期形冷改車では車体のみ初期形のものに組み替えています。見た目は初期形と同じですが、車体構造は極力冷房車仕様に揃えています(非冷房車は後述)。

 55-10改正〜57-11改正時点の頃の編成を再現しており、冷房車は1990(平成2)年、非冷房車は2005(平成17)年〜2019(令和1)年の改造です。

 ※側面からの車両画像は本ページ再構成のため2022年7月29日更新分にて全て撮影し直しました。使用カメラと焦点距離を大幅に変更したため若干写りに違いがあります。



第1部:冷房改造車グループ




 クハ103-618

 上野寄りの1号車で先頭のカプラーはダミーです。
 窓ガラスの関係でKATOクハ103非ATC車を種車とし車体をクハ103低運のものに張替えた後、側面に行先サボを追加します。
 屋根は常磐線用無線2個を取り付けますが、床下は種車のものをそのまま流用しヘッド/テールライト点灯式にします。
 この車両は前面および屋根の加工がメインとなります。





 サハ103-210・228・297

 クハ103-618と同じ工法で仕上げます。
 中間車の屋根はそのままで組むと両端がどうしても浮き気味になるので若干寸法を詰めると良いかと思います。
 サハなので側面のルーバーは全て削り取ります。





 モハ102-295

 改造は↑のサハ103と同じですが、側面のルーバーはそのまま残します。





 クモハ103-135

 冷改車グループの中で一番手のかかる車両で、車体構造はクハと同一ですが床下は点灯式にするためモハ103のものにクハ103の先頭部分を切り継ぎます。床下の切り継ぎは強度的に心配な部分がありますが、座席一式をネジでしっかり組み立てるので問題ないかと思います。もし心配ならば床下機器部分の見えないところで補強をするといいかもしれません。

 座席とヘッドライト部分一式はクハ103ATC用をそのまま流用しますが、ヘッドライトについては後天的改造で運行幕と行先幕の部分のみ白LEDで照明する方式に変更しております。つまりヘッドライトユニットは運行幕・ヘッドライト・行先幕をそれぞれ白LED・電球・白LEDの3灯で独立させて点灯させる方式に変更しており、元の製品の基板に抵抗とブリッジダイオードを追加する大改造を行なっております。
 同時に車体側のヘッドライトレンズ取付部分の両側に遮光板を追加しており、ガラスは運行幕・ヘッドライト・行先幕部分を3分割して別々に透明ゴム系接着剤を使用して固定しています。
 

 側面のルーバーはタヴァサのPN-444を使用しています。
 冷改車への改造ですが、実車が初期車と後期車(1972年登場の103系第1次改良形グループ以降の車両)の混結というパターンがほとんどで、10両全部冷改車というケースは極めて少なく一部の車両を改造するだけで済みます。




第2部:非冷房車編成


 55-10改正〜57-11改正あたりでの常磐快速線の冷房率は首都圏の通勤線区の平均値を少し下回るくらいで決して他線区よりも冷房率は高くなかったので非冷房車の比率が比較的高く、初期車・後期車ともに非冷房車が存在します。

 模型は非冷房車も↑の冷房車グループと同様の工程で改造を行ないましたが、車体の老朽化のため全車とも2019(令和1)年に更新改造を行なっており、床下・台車一式はKATO製のままですが、車体一式はGM製103系ボディキットのものに更新しております。
 GMの製品は冷改車仕様のため、車体側面サボの廃止と屋根にモールドされているランボードの撤去を行ないます。模型は実車の57-11改正時点でのマト9をプロトタイプにしております。



 クハ103-627

 屋根の非冷房化と側面サボを埋めて再塗装した後に車体をストレートに組上げています。
 窓ガラスには床下固定用の爪がありますが、このGM103系キットの最大の特徴としてGM製以外の各社の床下が使用出来るように各社用の爪が各々モールドされており、使用するメーカーに合わせて不要となる爪を切り取ります。
 裏を返せば切り取る爪を間違えると床下を固定するための必要な爪がなくなるという悲劇に襲われますが・・・

 車体更新と併施でヘッドライトユニットはGM製に変更しました。ライト取付のため床下や集電板部分に若干の調整が必要になります。





 モハ102-297・308

 床下はKATOのモハ102冷房車用をそのまま流用しているので実車にはないMGがモールドされています。





 モハ103-161

 動力車となっています。
 窓ガラス固定用の爪は非動力車とは異なるので切断の際に注意が必要です。





 サハ103-12

 こちらも上記の3両と同じく車体改造・塗装を行なってからストレートに組んでおり、KATO製の床下と組み合わせています。





 クモハ103-144

 こちらは非冷房のクモハです。

 ↑のクハと同じく車体更新時にヘッドライトをGM製のものに更新しています。






 モハ103-596

 常磐快速線なのにいきなり京浜東北線の103系が出てきました。

 実車では常時2・3号車のモハユニットが欠車となっているマト9に浦和電車区から貸し出されたM596+M'752を挿入したもので、57-11改正直後の1983(昭和58)年1月に見られました。全車非冷房のマト9の中でこの2両だけ冷房車になっております。
 模型ですがナンバーはモハ103-596に変更していません。忘れてました・・・

 参考までに実車の常磐快速線103系の混色編成ですが、この後の59-2改正がらみで大量に出現することになります。





 モハ102-752

 こちらは相棒のM'車です。

 実車と同様に誤乗防止用のステッカーを貼っていますが適当な大きさのものが見つからず、止むを得ずGMステッカーの中に入っていた常磐快速線クハ103-1000の前面用を切ってそれらしく貼ってみましたが、明らかにスケールオーバーです。
 こちらもナンバーは修正しておりません。



車両改造です

 1.KATO103系(旧製品)の冷房改造

KATOの103系は初期形非冷房タイプ(1966年発売)とATCタイプ冷房車(1984年発売)を混結させるとどうしても違和感が出てしまいます。
そこで、ATCタイプに外観・仕様を揃えるため、初期形の車両に改造を施してみました。
改造工期は約10日かかりました。施工は1990(平成2)年です。現在ではGM製の103系冷改車キットがあるのでこちらを利用するのが簡単です。


<用意するもの>
ここでは例として、クモハ103冷房車(クモハ103-135)の改造製作について述べます。
中間車にも応用できます。

・モハ103(冷房車) 1両
・クハ103(非ATC車)  1両
・クハ103 または クモハ103(初期形)車体 1個
・常磐線用列車無線アンテナ 4組(銀河 N-007)
・信号炎管(銀河 N-002)




まず、車体の構造を基本的にATCタイプに合わせます。
初期形の車体は単に枠状になっていますので、天井部となる部分にATCタイプの天井部(室内灯取付部)をそぎとって移植しますが、位置に注意して接着しないと屋根板を取付けた場合車体との間に隙間が出来てしまいます。

次に、ATC車の窓ガラスを組込むために、窓のモールドを縦ピラー以外すべて削り取ります。
窓ガラスをスムースに組込むためにはそれなりの調整が必要です。

次に車体内側にある床板取付用のツメをすべて撤去します。
以上、この改造を行なうと以下の写真のようになります(写真はサッシのモールドを全て削り取っていません)。




















       ↑ 再塗装するので種車は何色でもOKです。

忘れがちですが、クモハとなる車両は側面グリルを取付けます。私はタヴァサのPN-444を使用しています。
また、妻面には主回路用の配管を取付けますが、私は現物合わせで真鍮線を適当に曲げて使用しています。

次に、ヘッド/テールライトも点灯するように改造します。
ヘッドライト・行先幕・運行幕・テールライトを、Hゴムやライトのフチを傷つけないように丁寧にピンバイスで穴をあけ、細い鉄やすりで仕上げます。特にライト部の穴あけは最初に中心を正確にケガキを行なった後、数回に分けて少しずつ行なうと良いでしょう。

80年代のTVCMにもありましたが、『人形は顔が命・・・』とはこれまたウマい事を言ったもので、この工程をうまくクリアーできるかどうかで作品の良し悪しが概ね決定してしまいます。

この工程が終わった状態が左下の写真です。あと、冷房車にするには側面の行先幕新設の加工を忘れないように!!


次にヘッドライトです。
私は実車同様シールドビームにしました。
GMで発売されている103系用先頭パーツの中からヘッドライト部分をそぎとって使用しました。

最後に、屋根を少々改造します。
常磐線特有の無線アンテナを取付けます。また屋根と一体モールドとなっている直流避雷器は撤去し、KATOから発売されているAssyパーツのものに交換します。
また、車両更新車タイプにするには、是非とも塗り屋根にしてあげましょう。この場合妻部のキャンバス押さえも削り取ります。

ここまでやると屋根はこんな感じになります↓

ここまで終了したら金属部分にプライマーで下地処理後、車体・屋根を塗装します。
また、余力のある方はHゴムなど各部に色入れをすると一層引き立ちます。
乾燥したら、次は楽しい各パーツの取り付けです。

ヘッドライトは点灯式にするため、ライトのレンズはKATOのクハ210のものを使用していますが、そのまま組込むとレンズが思いきり突出するので現物合わせで切断しています。


次に、床板の改造です(↓の写真をご覧下さい)。
ヘッドライト点灯式にするため、クハ103の床板(先頭部)とモハ103の床板をクハ103の座席が取付けられるように現物合わせで切り継ぎます。あまり見えない部分なので、塗装は不要かもしれません(私はタッチアップのみで済ませています)。
座席はクハ103のものをそのまま流用します。



これで、改造は終了。
ライト類をフル装備して点灯させるとこうなります。























 2.ヘッドライト部分を徹底的に改造する

 KATO製103系ATC車の製品のヘッドライトは昔ながらの電球にて点灯する方式であり、室内灯は折角白LEDで点灯させても先頭部の運行幕と行先幕は電球で点灯させるのでどうしても違和感が出てしまいます。
 そこで幕部分のみ白LEDで点灯させる事を思いつきました。

 なお、これはATC/非ATC車および低運/高運車を問わずKATO製のヘッドライトを装着する同社製クハ103/クモハ103全車に共通して行なっている改造で、私の所有する103系(全車KATO製)の先頭車全車を対象に2011〜2012年にかけて集中的に行ないました。







 ← 屋根を取外し可能にさせるため、追加する遮光板の接着は車体側のみとし、
屋根側とは接着しない方が無難です。



















 ← 使用する白LEDは4V・40mAであることを前提として270Ω抵抗を使用しましたが、白LEDを2個直列に繋いでも(LEDの複数個直接の並列繋ぎは厳禁)煌々と明るくなりすぎる傾向があるのでもう少し大きい値の抵抗を使った方がいいかもしれません。

















最後に・・・

私の103系電車(103系に限らず殆どの所有車両が該当しますが)は室内灯装備に備えて室内および座席を塗装しております。
参考までに掲載しておきます。



写真左から
未更新タイプ、特別保全工事車タイプ、車両更新車タイプ


今回はかなり贅沢な改造になりましたが、あまり手をかけたくないという方は車体と屋根を接着して一体化するなど、少し簡略化すると良いでしょう。非冷房車のままにする場合は窓ガラスを交換するだけでもいいと思います。
なお、この工法はTMS等の記事は一切参考にせず、管理人自身が1986(昭和61)年に独自に考案したものです。

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