59-2改正は全国白紙改正ではなかったものの、大都市圏や地方の主要都市圏内での普通列車の増発があった一方で、輸送需要の減少している分野については思い切った見直しを行ない更なる効率化を推進したダイヤ改正です。

 この影響をまともに喰らったのが関西〜九州間を結ぶ寝台特急で、57-11改正以降も向日町運転所の583系で残った『なは』・『彗星』の2往復が廃止され、残った関西発九州方面の寝台列車は全て14系15形・24系に統一されました。この関係で九州内での間合いを利用し設定されていた583系の『有明』・『にちりん』は485系に統一され、583系は関西以西から姿を消しました。
 その結果59-2改正だけで120両以上の583系が余剰となりましたが当時車齢15年前後だった583系を直ちに廃車にすることも出来ないため、583系転用に関する検討が進められ出てきた結果が715系1000番台への改造です。同時に北陸地区向けの419系も登場しました。関西〜九州間を走っていた暖地仕様の車両が一転、東北の地を走る事となり715系への改造時に併施で耐寒改造も行なわれています。
 583系時代の1975年頃より台車の強化形への取替や、PCB対策として主変圧器の冷却油をシリコン油に変更したTM20形への更新などの大型改造投資を行なったことが、715系・419系改造への決定的な理由となったようです。

 その前の57-11改正でも関西〜九州間の列車削減が行なわれ余剰となった581系が715系 (0番台) に改造されて59-2改正より九州で運用開始となっていますが、715系1000番台はその第2弾として登場しています。東北線黒磯以北に残っていた客車普通列車の全面電車化の一環として60-3改正より東北線黒磯〜一ノ関間でやはり同改正において急行全廃で大量に余剰となった455系とともに運用開始となりました。仙台地区での運用を考慮し耐寒耐雪構造となったため1000番台となり、九州用の715系と明確に区分されています。

 715系1000番台は59-2改正〜60-3改正の約1年の間に60両 (4両編成×15本) と短期間で大量の改造工事が行なわれたため、改造落成当初は編成を組んでも起動不能・各種ランプ不点灯等、あちこちで初期故障が続発したそうで60-3改正での運用開始前の段階ではかなり手のかかる車両だったようです。改造は郡山・土崎・小倉の各工場で施工されました。
 捻出となる車両の需給の関係で、黒磯側のクハはクハネ581が種車であるクハ715-1000となりましたが、一ノ関側のクハはサハネ581を先頭車化改造したものでコストダウンのため完全切妻となり、クハ103ATC車やクモニ143に酷似した高運転台スタイルとなってまるで食パンを輪切りにしたイメージとなっています。これは先に登場した九州用715系と同様です。

 登場時はクリーム1号地に緑14号の帯でしたが、その後登場した455系新塗装車に合わせてクリーム10号地に変更されています。一部の車両は特別保全工事が行なわれていますが室内配色変更等の更新工事はされていません。455系と共に仙台地区での主力車両として活躍しましたが徐々に老朽化が激しくなり、また特急時代の折り戸が残った事で乗降に時間がかかるなどの問題もあったようで1995(平成7)年より段階的に701系に置き換えられて1998年に消滅しました。


 模型はKATOの583系 (1983年発売の1次製品) を種車に改造しています。寝台用小窓の閉鎖、側扉の増設やクハ715-1000の製作、サハネ581の先頭車化および室内のセミクロス化が改造の中心となります。塗装は1986(昭和61)年に登場した455系新塗装車に合わせたクリーム10号+緑14号帯のスタイルとしています。改造は1987(昭和62)年〜1991(平成3)年で、クハ715-1000愛称幕の白LED化は2011(平成23)年です。


 東北の715系は60-3改正で登場した  それまで東北の主要幹線における普通列車の大部分がED75+旧型客車の組み合わせで車両の老朽化が進んでおり、車両の取替えに当たっては単純電車化でも十分なメリットが期待できると判断したようで60-3改正で電車化が実施された  特急・急行の廃止により余剰となった捻出車を有効活用する事により車両の若返りを図ったと見ることも出来る

 同改正における東北線黒磯以北の普通列車の電車化は北・仙・盛の3局に跨った黒磯〜一ノ関間で実施され大幅なスピードアップが図られたが、一ノ関以北は全面的に12系・50系に置き換えられたものの客車普通列車が残った  以降は一ノ関で電車と客車が分断され同駅で乗換えが強制されるダイヤとなり、下本側に仙台方面行の列車が、上本側に盛岡方面の列車が発着する変則的なパターンになったが完全電車化された現在でもそのまま踏襲されている

 715系1000番台の登場当初は画像のようにクリーム1号ベースのカラーリングとなっており、1986年より455系新塗装車に合わせてクリーム10号ベースに順次変更された  九州の715系とは異なり車体腐食防止の観点から寝台用小窓は改造当初から全て埋められている

  1985. 5.-3  一ノ関駅




 まずは真横からの形式写真です。





 モハ714-1010

 715系の動力車です。
 実車同様モハネ582からの改造で、便・洗面所を撤去し側扉を新設し隣りに窓を追加します。増設する側扉は実車の車体構造の関係で若干車体中心寄りになります。反対側の元からある側扉の隣りのリネン室の窓も客窓に変更しますがリネン室用扉を表現しているスジは潰します。
 側扉隣にある新設する窓は185系の戸袋部から移植して表現します。また、種車のクロスシート部の側窓のうち3箇所 (両側面共) は開閉式に変更されているので塗装によって表現します。縦ピラーはGMステッカーの余白部分を細く切って (概ね0.5mm程度) 利用しています。

 実車の2エンド側 (第2パンタ側) 妻面には貫通扉が追設されているので、側扉を切り取って余剰となった583系の車体から捻出した貫通扉を取り付けています。
 屋根は第2パンタが撤去されているので碍子を撤去し、碍子用配管・ランボード・第1〜第2パンタ間の母線のモールドを全て削り取り、平滑に仕上げてからねずみ色を吹いた後に塗屋根にしています。塗屋根化は仙センN10の4両全車を対象に行なっており、妻面のキャンバス押さえは削り取ります。

 大幅な車体構造の変更はしていないので動力はそのまま取り付けられます。





 モハ715-1010

 ↑のモハ714-1010とユニットを組むM車です。種車はモハネ583で車体の改造要領はモハ714とほぼ同じです。

 実車の室内はセミクロス化され、一部の座席がロングシートに変更されているので模型でも当該部分のクロスシートを撤去し、自作のロングシートを取り付けます。





 クハ715-1010

 東北線基準で黒磯側のTc'車です。

 種車はクハネ583で、窓割を一旦クハネ581仕様にしてから715系向けの改造を行なっています。クハ715-1000の側扉は全て新設されたもので、枕梁より内側の配置となります。
 1987(昭和62)年頃のスタイルをプロトタイプとしており後位側の側扉付近にシルバーシートマークを貼り、銀色のJNRマークと白のJRマーク両方を転写します。
 屋根の通風器ですがクハネ581初期車・同後期車およびクハネ583で全て配置が異なるのですが、見た目はあまり違和感がないという理由でクハネ583のままとしています。

 実車は2編成併結の8連での運用が存在するため先頭側も連結可能にするよう改造します。
 先頭のカプラーは改造当初はKATOの近郊形・急行形電車と同様にスカートごと首を振るタイプにしており、カプラー用の腕は製品のままでは短いので延長する形で腕を切継いでいます。台車の接着は材質の関係で普通の接着では無理で、瞬着用のプライマー処理を行なった後に瞬着で固定しますが、強度不足が懸念されたので車軸と干渉しない程度に別の部材を使って補強を入れています。これにより回転式のヘッドマークがそのまま使用可能となります。
 ヘッドマークは『普通/快速/急行/回送』の4コマとしています。

 ですが、実際走らせるとカーブを走行中台車側カプラー腕に取り付けたスカートと床板に開いているスカート取付用孔(製品のままで塞いでいない)が引っ掛かりかなり高い確率で脱線するという不具合が見つかり、その反映で現在はカプラーはマウントタイプTN密連を使用し、種車のスカートと組み合わせて床板に接着して固定する方式に変更しています。
 ヘッドマークは回転式のものをそのまま活用していますが、床板にTN密連を取り付けたため回転が不可能になり、『普通』表示の状態にしています。ATS標記は『S』としています。





 クハ715-1110

 東北線基準で一ノ関側のTc車で、実車同様サハネ581の先頭車化改造によって製作しています。

 車体はサハネ581とクモニ143の先頭部分を接合していますが、サハネとクモニ143の車体幅が異なるのでサハネ側の寸法に合わせるよう改造します。
 クモニの車体で実際使えるのは先頭の顔の部分と乗務員室運転席側にある小窓だけで、側面はとりあえず今回の583系改造で余った車体 (トイレ側の構体が使えればベスト) を接合し、455系の改造で余剰となっていた先頭車から調達した乗務員扉を切り取って接合します。
 車体幅はサハネに合わせるため幅を合わせる形でずらした状態で接合します。その結果先頭部の両端には段差が出来ますので瞬着をパテ代用にして多めに盛り乾燥後に平滑にします。詳細は↓で述べることにします。

 先頭台車は↑のクハ715-1010と同様に種車のものをそのまま使用しクモニ143用のスカートをグレーに塗って取り付けて首振り式にしていましたが、クハ715-1010と扱いを統一するためマウントタイプTN密連を使用しクモニ143用のスカートをグレーに塗って床板に固定する方式に変更しています。ATS標記は『S』としています。





 モハ714-1007

 仙センN7のM'車でこちらは非動力車で、車体の改造はモハ714-1010と同一です。

 車体・床下ははモハネ582用を使用し、実車同様セミクロス化しています。
 実車は床置型の冷房装置が客室内に鎮座しており、周辺のロングシートが冷房装置で分断されている格好なので模型でもそのように表現しています。

 屋根は編成ごとの変化を出すため、こちらはねずみ色の塗装仕上げとしています。塗屋根ではないので妻面のキャンバス押さえは残します。





 モハ715-1007

 屋根が塗装仕上げになっている他はモハ715-1010と同じです。

 モハ715は715系の中で最も変化の少ない形式です。





 クハ715-1007

 こちらも屋根が塗装仕上げになっている以外はクハ715-1010と同じです。こちらも先頭部のカプラーは↑のクハ715-1010と同じ経緯でマウントタイプTN密連に変更しているので編成の中間に入る事が可能です。

 少しでも変化を出すため↑のクハ715-1010とは異なり、こちらは完全たるJR仕様でJNRマークは貼らずJRマークのみとしています。






 クハ715-1107

 こちらも屋根が塗装仕上げになっています。 先頭部のカプラーは他のクハ715と同様の経緯を辿っています。






 715系の製作はかなり大変です・・・
 全車に共通の改造項目として寝台用小窓の閉鎖、側扉の増設、妻面にある油圧ダンパーの撤去、座席のセミクロス化があります。

 では、ここから改造の説明に入りたいと思います。


 §1.各形式の改造


 1.モハ714・モハ715の製作

 種車は実車と同様モハネ582・583を使用します。

 車体関係では側扉増設・窓増設・側窓の一部を開閉式に変更する工程が中心になります。モハ714・715とも窓割が一部異なるものの、改造要領は基本的に同じです。
 また特急形電車が近郊形電車になってしまうので715系全車共通で妻面にある油圧ダンパーを撤去します。デザインナイフを使用しモールドを丁寧に削り取るのですが、作業面積が狭いということもありカッターナイフ使用はあまりオススメ出来ません。概ね撤去出来たらパテを塗ってサンドペーパーで仕上げますが、周辺には幌枠やダクトがあるのでキレイに撤去するのはなかなか難しいです。

 増設する側扉ですが、12系・14系の車体を利用すると1両の車体から4個が手に入るので経済的ですが、よく見ると形態が少し異なります。
 私は改造費が高くつくのを承知で583系の車体から捻出し形態が揃うのを優先しています。側扉部分のみ切断され車体の大部分が余る訳ですが余った部分はなるべく有効活用することとし、クハ715-1000の機器室部分やクハ715-1100の運転台ブロックの製作に活用しています。
 床板はトイレ用水タンクの撤去が必要ですが、模型では改造せずそのまま使用しています。

 詳細を↓に示します。






 2.クハ715-1000の製作

 前述の通りクハ715-1000はクハネ583が種車で、切継ぎは機器室周辺が中心となります。種車の側扉はそのまま移設すればいいのですが、どう考えても寸法的に流用するのが難しい (どんなにうまく切断出来たとしても乗務員扉・側扉のどちらか、または両方とも犠牲になる) ので別の車体を用意して側扉だけで583系2両分使用しています。
 床下はクハネ583のままとしています。






 3.クハ715-1100の製作

 種車は実車と同様サハネ581で、先頭部形状は完全切妻形となっているのが特徴です。改造にあたっては形状がよく似ているクモニ143の前面を使用しますが車体幅が異なるので接合時に注意を要します。

 運転台ブロックはクモニ143・583系・455系の車体から切り出した各パーツの複雑な切継ぎが必要になります。





 切妻形状の運転台ブロックの製作ですが、以下の要領で行なっています。
 下の説明の通りにサハネの車体にクモニの前面を接合するとクモニ143前面の両端に段差が出来るわけですが、この段差を埋めるには瞬着を塗っては乾燥させ、塗っては乾燥させ・・・という作業を何回か繰り返し瞬着をパテ代用にして妻面両端を成形しています。
 この成形にプラパテを使用せず瞬着を用いる理由ですが、先頭部妻面の両端部なのでプラパテだと欠けやすいからです。






 §2.屋根の改造など


 1.モハ714の屋根


 ↑の§1-1の画像と一部重複する箇所がありますが、モハ714の屋根の改造は左の画像に示す通りです。

 直流避雷器および交直切替関係の碍子類は殆どを撤去し、銀河の7段碍子と真鍮線を使用して写真のようにまとめています。


 なお、モハ715は塗屋根化以外の切継ぎ・撤去・移設等の改造はありません。





 2.貫通扉の増設

 715系1000番台は前述の通り耐寒耐雪仕様であるため、九州用の暖地向け715系0番台とは異なり妻側で貫通扉のない部分 (種車でデッキがあった所) には貫通扉を増設しています。

 模型も実車同様に増設しますが、元の妻板の幌枠モールドは生かして幌枠の中に今回の改造で余った前述の583系車体から貫通扉部分を切り出して嵌め込みます。
 別車体から扉部分のみ切り出してはめ込むと扉周辺に隙間が出来たりしますが、隙間をパテで埋めてバッチリ塗装してしまえばわからなくなります。

 画像はモハ714-1010で、妻面のキャンバス押さえは削り取っています。


 3.床板・座席


 4形式まとめて以下の画像に示します。





 4.クハ715-1100のヘッドライト周辺
 ヘッドライト用遮光板間系は113系用の部品を流用します。

 113系とクモニ143のヘッドライトの左右の間隔は偶然にも同一なので以下に述べるような加工が必要になってきますが、加工後はすんなりと取付が可能です。
 ヘッドライトレンズ用の遮光板は113系用なので先頭部分は台形のような形状になっています。

 クハ715-1100は切妻なので台形の部分をまっ平らに削り、両端は幅を詰める形で削ってしまい車体の形状に合わせます。


 この加工で何の問題も無く車体に納まります。取り付けにあたって干渉部位はないので車体側の加工は不要です。



 5.クハ715の先頭台車

 前述の通り、カーブ走行中に床板と接触しカプラー腕が引っかかって台車が旋回不能となり脱線する不具合が発生したので、マウントタイプTN密連を使用するタイプに改修を行ないました。

 余談ですが、頻度は少ないですがカプラー腕を延長するとレールがレベルから勾配に差し掛かった時に長くなったカプラー腕と床板が干渉し、台車が浮き上がり脱線するという不具合もありました。

 今回の改修で何れの場合も不具合が発生せず安定した走りを実現しています。
<改修前> <改修後>



 6.組み立て・その他

窓ガラスはそれぞれ元の車体のものをはめ込みますが、一部切り離したりするので接着した方が無難(接着剤は少なめにした方が良い)でしょう。今回使用した接着剤はボンド(発泡スチール用)です。
また切り継ぎを行なったため車体やガラス同士が当たる所や、増設した扉と床板部分などには適当に逃げを設けたり削ったりして部品同士干渉しないようにすることも必要です。

あとは細かいパーツ類をつけますが先頭車にはJR統一形アンテナ、シルバーシートマーク、およびJRマークを、クハ715-1100の方向幕には紺色地の『普通』のシールを貼りつけて715系1000番台が無事完成です。



 <参考文献>

 鉄道ファン  83-12号  715系 (新車ガイド)  交友社  1983
 鉄道ファン  84-12号  715系1000番台・419系 (新車ガイド)  交友社  1984
 鉄道ファン  87-12号  JR交流・交直流近郊形電車  交友社  1987
 NゲージブックNo.5  419系の3連  機芸出版社  1990
 鉄道ピクトリアル  1993-6  JR583系電車の現状  電気車研究会  1993



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