417系は仙台地区普通列車の一部電車化用として1978(昭和53)年に登場しました。第一陣として3両編成×5本の15両が日立で製造されその後は追加で同数の15両程度が増備予定でしたが後の国鉄財政の悪化に伴ない第1陣の15両で増備が打ち切られた少数派のグループです。
 投入先の仙台地区の状況を踏まえ耐寒耐雪構造・片側2扉・冷房準備・抑速ブレーキ付きの仕様で性能面では115系1000番台の交直流版ともいえる車両で、交流側50/60Hz共用です。運用区間は東北線仙台−利府・福島間で53-10〜55-10改正時点では最大9連で運転され、59-2改正で3〜6連での運用となり運用範囲に新たに仙山線が追加されています。当時常磐線仙台口のみで運転されていた50系客車のライバル的存在でした。1990年3月改正で仙山線運用は719系に置き換えられて東北線のみとなり1997年頃より黒磯まで顔を見せるようになりました。交直流車ですが東北線の交直切替駅である黒磯を挟んで直流区間に顔を出す運用はありません。当時の国鉄の考え方として交流専用車にすることによるコスト面の問題や将来転用が利くよう交流区間限定でも交直流車とする方針であり、直流区間の運用がなくても交直流車で計画されました。
 新製時より長らく415系と同じ交直流標準色を纏ってましたが、民営化後の1989(平成元)年〜1991(平成3)年にかけて冷房改造および455系と同じ東北色への色替が実施されています。455・457系などで見られる特別保全工事や車両更新改造などの延命改造は行なわれませんでした。
 2007年にE721系に置き換えられ、一部は訓練車に転用したり東北線福島〜槻木間において平行して走る阿武隈急行に譲渡されたほかは廃車となりました。


 一方717系は特別保全工事で延命を図っている455系に対し455系よりも車齢が高く特保による延命策にも限界がある451・453系を対象に、こちらは車体新造による更新改造によって登場した形式で台車や主電動機・主変圧器・主整流器・冷房等の主要機器は種車から再用しています。
 417系の場合と同じく当時の財政事情の悪化が影響しており、車両新製を行なわず451・453系の改造で所要両数を確保する方法が採られています。電動車は451系からの改造車が0番台、453系からの改造車が100番台で区分されています。1985(昭和60)年9月に登場した東北色455系の後に落成したので当初から東北色となっています。設計は大井工場で、改造は郡山・土崎・小倉の各工場で国鉄民営化を挟んだ1986(昭和61)〜1988(昭和63)年に合計10本30両が増備されました。
 改造時に併施で451系からの改造車は主電動機がMT54に交換されてMT46の淘汰および性能の統一化が図られています。また主変圧器はPCB対策でTM20に変更されたので451・453系の改造車でありながら50/60Hz共用となっています。車体の設計は同時期に落成した北陸用の413系 (こちらは60Hz用471・473系の改造) とほぼ共通で、従来からのジャンパ栓も残されたため未更新の451・453系や455・457系とも併結可能で、常磐線では併結運用も存在しました。

 451・453系時代と同じく更新後も常磐線平(現・いわき)〜仙台間を中心に、間合で東北線福島〜小牛田・利府間でも使用されましたが2007年にE721系に置き換えられ、こちらは全て廃車となっています。


 模型ですが、417・717系は私の一連のNゲージ改造車の中でも最大規模の改造工事となっており、KATOの115系・415系とキハ47の車体の超複雑切り継ぎでまとめました。改造期間は1991(平成3)7月〜1993(平成5)年8月の2年間に亘り、417系6両・717系6両の合計12両同時進行で改造しています。改造に先立ちとりあえず試作車体先頭・中間用を各1両分製作し (この車体は417系製作に流用) 具体的な改造工法を検討したうえで本格的な改造に入りました。
 大改造の割には車体の基本構造を変えていないので床下は製品と同様にそのまますんなりと納められる構造になっています。

 改造製作にあたってはかなり時間のかかる複雑で面倒くさい切継ぎ改造が続くのが特徴で、種車購入以外の改造費 (大部分がキハ47車体の購入費用) だけで約40、000円ほどかかりました。

 2扉セミクロスの近郊形電車は北海道の711系を除くと417系が初で115系1000番台に続いてシートピッチ拡張形として登場した  711系なみの雪切室が存在するのが外観上の特徴である

 当初は画像のように交直流色・冷房準備仕様で登場している  今後の地方都市輸送改善用の標準として登場した2ドア近郊形スタイルであるが、なかなか後続車に恵まれず1983年に713系が、1986年に717系・413系が少数出てきたに留まった


 1985. 5.-4  仙台駅
 こちらは417系末期の頃の画像である  1989(平成元)年〜1991(平成3)年にかけて冷房改造が、1990(平成2)〜1991(平成3)年にかけて東北色に色替されて717系に酷似したスタイルとなるが、先頭車のスカートおよびAU75系冷房装置と側扉半自動扱い用押しボタンが追加された点が717系と異なる部分である

 2007年にE721系に置き換えられて廃車となるが、画像のK1は廃車後阿武隈急行に譲渡され、K4が仙台レールセンターにて訓練車として機械扱いで残ったが、現存しているのは仙台のK4のみである


 2006. 6.-3  東北線 泉崎−矢吹



 
§1.417系

 改造当初は全車ともJR仕様で落成し冷準車3両・冷改車3両の構成でしたが、後に全車とも国鉄仕様に変更され屋根は冷房準備仕様に統一しています。
 塗装は常磐線415系交直流色と同じです。

 なお、民営化後の冷改車仕様にする場合は冷房はAU75Gを使用します。




 クモハ417-2・5

 クモハ115を種車とし、乗務員扉から前と妻板部分を残してそれ以外の側板を全て撤去し、予め切継いで組んでおいたキハ47の車体側面構体を接合します。戸袋窓は不要となった種車の115系のものを流用します。
 また、右端にある雪切室のルーバーはタヴァサのPN-410に含まれているクハネ581用ルーバーの網目部分をカッターで切り離して使用します。先頭部の屋根には穴をあけて455系用検電アンテナ (アンテナ本体の加工が必要) をつけます。
 床下はクモハ115用をそのまま無改造で使用していますが座席は417系用に配置し直します。スカートは適当なものがないのでクモハ・クハ共通で211系用の流用で、台車はDT32を使用します。




 モハ416-5


 車体はモハ414を使用する他は改造工法はクモハ417と基本的に同じです。
 屋根はモハ414と身延線モハ114冷房準備仕様を切り継いでいます。現在では切継ぎ無しにTOMIX製の冷房準備蓋が流用出来ると思います。

 動力装置・台車はモハ456用がそのまま流用可能です。




 
モハ416-2

 こちらは非動力車で、↑のモハ416-5にプラスして床下および座席の改造が追加になります。
 主変圧器・主整流器を中心に実車の画像を参考にして並べています。

 車体側面の行先幕は417系・717系全車共通で種車の車体から切り出して切り継いでいます。





 クハ416-2・5


 種車はクハ115で、車体構成はクモハとほぼ同じですがトイレを追加します。トイレ窓はクハ115の流用です。トイレの有無以外一見クモハと同様の車体に見えますが、窓割が若干異なります。
 屋根はクモハ・クハともKATO製身延線115系用 (90年代前半の一時期に冷房準備仕様の屋根だけ別売パーツとして発売されていた) をそのまま使用します。
 床板・座席関係はクハ115用を使用しますがクモハと同じく座席は417系用に配置し直します。床下はMGの位置が若干実車と異なりますがクハ411用に作ってあったものをそのまま流用しMG・CPを追加しています。
 台車はTR69を使用します。



 §2.717系(0・100番台)

 一見417系の色違いのように見えますがこちらは451・453系の車体更新改造車です。新製は車体のみで主要機器は種車からの再用品を使用しているのが特徴です。
 417系と比較して外観上の相違点で決定的なのが屋根の冷房装置で、その分417系よりも改造工数が多いです。

 模型は417系と同じくキハ47の車体側面構体の切継ぎでまとめますが、車体はクハ111・モハ414を使用しています。
 改造内容・車体構造は417系の場合とほぼ同じで窓割が一部異なる他、Hゴムは黒で表現します。また、717系は全車に行先サボ受けが追加になります。
 屋根は417系は塗装仕上げですが717系は全車共通で全体をねずみ色1号を吹いた後に塗屋根塗装を施しています。

 クモハ・モハは0・100番台の両方がありますが、模型では改造内容は同一です。






 クモハ717-4・103


 改造はクモハ417とほぼ同様ですが、417系とは異なりタイフォンが暖地仕様なので車体は窓埋め工数を低減させる意味もありクハ111-1600用を使用しています。417系では大型だった雪切室が小型に変更されたので窓割が若干異なり、狭幅の窓が車端部に1箇所追加となっています。雪切室部分には115系1000番台と同じ雪切室用ルーバー(タヴァサ製)を取り付けます。
 屋根は元のモールドを一旦全部撤去し更地にしてからAU13E×6台と急行形電車の屋根から切り出した押込型通風器(斜めタイプ)を配置します。斜め形通風器ですが改造当時(1992〜1993年)は市販品で分売パーツが無かった時代だったので自分で製品から削りだして作るしかなかったのですが、現在ではTOMIXやGMより分売パーツが発売されているのでこれを利用した方が楽です。交流専用車なので検電アンテナは不要です。

 床下もクモハ417と同様クモハ115用を無改造で使用し、スカートは211系用を装備しています。座席は417系とほとんど同じ位置に配置しますが、大型の雪切室がなくその分ロングシートが延長されているところが417系とは異なる部分です。





 モハ716-103


 717系の動力車です。
 モハ416-5の場合と同様で、モハ414の車体にキハ47側面構体を切り継ぎます。こちらも前述の通り雪切室が大型から小型に変更されているのでモハ416とは窓割が一部異なり狭幅の窓が追加されています。
 同様に雪切室部分には115系1000番台用ルーバーを追加します。

 屋根もモハ414用を使用しますが、元のAU75のモールドを撤去しAU71を接着します。
 低屋根部ですが交流専用車なので配管の這わせ方がモハ414とは若干異なり、私はモハ714-1000の画像を参考に一部のガイシ類を撤去し配管を一部作り直しています。

 動力もモハ416の場合と同じで動力車の場合はモハ456用動力がそのまま流用可能です。





 
モハ716-4

 こちらは非動力車です。
 モハ416-2の場合と同様、床下の改造が追加になります。実車の画像を参考に交流機器を中心にそれらしく並べていますが、モハ416とは搭載機器が若干異なります。





 クハ716-6・8


 車体関係はクモハ717の場合とほぼ同様ですが、実車は種車の汚物循環処理装置をそのまま流用した関係でトイレの位置が通常の近郊形とは異なる4位側(画像基準で手前側)に配置されているのが最大の相違点です。
 屋根はクモハ717の場合と同様にAU13E×6台と斜めタイプ押込み型通風器を配置します。

 座席はクハ716用に改造しています。床下はクハ416の場合と同様にMG・CPを追加しますがMGの向きや機器類の配置がクハ416とは異なります。配置まで完璧にすればいいのですが、改造当時はとにかく工数を減らしたかったので(汗)座席と床板を固定するツメの位置を基準にクハ111用とモハ112用を単純に切り継いで表現しています。したがって415系・417系の場合とは異なりMGの向きが反対になります。



ここからは改造の詳細について述べてみようと思います。



1.車体切継ぎ

 1両の改造にキハ47の車体が2両分が必要になるわけですが、以下のように切り継ぎます。

注意点として、電車と気動車の車体を雨樋を基準にして切り継ぐと裾部に段差ができますが種車である115系の寸法に合わせるため、車体の接合が終了した後にドア部を除いて約0.2mmほど削って裾部の高さを揃えます。
複雑な切継ぎを行なったため車体の強度を保つためにも切継ぎ部の裏にはプラシートなどを使って裏打ちするといいかもしれません。



 本当は1両の改造につき車体1個としたかったのですがどうしても寸法的に足りず、やむを得ず車体2個を使用しスケール重視としました。キハ47の車体の一部しか使わず歩留まりが非常に悪いのですが、この方が比較的簡単にまとめられるのと切り継ぎ箇所が大幅に少なくなるためこの方法を採用しました。417・717系共通でMcM'Tc' 3両編成1本の製作でキハ47の車体・窓ガラスが6両分必要になります。

 以下の画像はモハ416の例です。クハ416・クモハ417および717系も一部窓割等が異なるものの、改造要領は基本的に同じです。





2.雪切室

 417系では雪対策という理由で使用している主電動機はMT54系でありながらモータ内に冷却ファンを持たないタイプを使用しており、雪切室内において送風機で循環させる方式を採用しています。そのため車端部に大形のグリルが装備されており外観上のポイントとなっています。
 これを的確に表現するためいろいろと検討した結果、タヴァサPN-410に入っているクハネ581用のグリル部分のみを切り取って使用しました。


 クモハ・モハは2箇所、クハは1箇所ついています。クハは恐らくMG用と思われます。
 717系の主電動機は通常のMT54系を使用している関係で115系1000番台の方式が採用されており、雪切室は417系よりも小型となっています。グリルはタヴァサの115系1000番台用を使用します。

 雪切室が小さくなった分1箇所に付き座席定員2名分が増えた関係で窓割が変更となり小窓が追加となっています。

 クハ716には雪切室はなくトイレと大窓がそれぞれ1箇所ずつ追加になります。


3.屋根

 
その1.417系

 クモハ・クハは115系身延線仕様の流用で切継ぎ等の改造は行ないません。

 モハ416はモハ114身延線とモハ414との切り継ぎが必要になります。切り継ぎ以外は特に加工しておらず高圧機器の配置も製品のままですが、色合いを統一するためMcM'Tc'3両編成単位で屋根の塗装を行なっています。
 改造を行なっているモハ416の概要は概ね以下の通りです。改造に当たっては材料は長めに切断し徐々に所定の寸法に合わせる方が無難といえます。

 現在では身延色115系がほとんど入手困難な状況です。TOMIX製の分売パーツ (115系冷房準備フタ) が使用可能ですが、冷房のモールド撤去・通風器の形状を合わせる等の何らかの加工が必要になってきます。






 
その2.717系

 717系は417系の場合とは異なり717系独特の機器配置になっていますので製品の流用が出来ず大幅な改造が必要になります。
 クモハ・クハは種車の115系の屋根を使用します。モハの場合はモハ414の屋根を使用しますが冷房車仕様なので切継ぎは不要です。改造の詳細を以下に示します。


 まずはモハ716ですが元のAU75冷房装置のモールドが不要になります。周辺に傷をつけぬよう撤去し切り口をキレイに整地します。AU75とAU71では全長が異なるので、AU71を搭載した時に生ずる両端の隙間を塞ぐ意味でAU75撤去により孔が開いた部分を塞ぎますが、外から見えなければいいので屋根に開いた孔を全て塞ぐ必要はありません。
 通風器は特に改造の必要はなく製品のままです。

 次に冷房装置の両側面にあるランボードを全て撤去します。ランボードを大まかに削って冷房装置を搭載する部分一帯をまとめて鉄ヤスリで荒削りしてから目の細かいサンドペーパーで最終的に仕上げます。

 冷房は改造当時は別売パーツがなかったのでモハ164から切り出して下端部を整形したAU71を使用していますが、現在ならTOMIX製の分売パーツ(PC-107 モハ164/168)が使用可能です。
 参考までにモハ164から切り出したAU71ですが、屋根に貼った荒めのサンドペーパー(#400程度)の上でやすって屋根とAU71の下端部のカーブを合わせています。
 なお、『計器用変圧器に碍子を追加』 の項目はほとんどの国鉄型交流/交直流電車に共通する項目です。また、低屋根部高圧配管は715系1000番台を参考にしています。





 クモハ・クハの屋根は共通で概ね以下に示す寸法で冷房・通風器を配置しています。
 寸法はノギスを使用する前提で0.1mm単位としています。各寸法は図面から割り出した参考値で、単位はmmです。





4.妻板

 妻板のポイントはやはり配管ですが、当時詳細がわからなかったのでモハ414のままとしました。モハ416・モハ716共通です。





5.座席・室内

 車体の次にヤッカイな改造を強いられるのが座席の製作です。
 流用できるパーツがないためやはり改造になるわけですが、加工しやすさを考慮して各車とも211系用を使用しました。
 元の座席モールドをすべて撤去し床面を鉄やすりとサンドペーパーで平滑にした後、165系用から切り出したクロスシートと自作のロングシートを組み合わせて以下のようにまとめています。


 画像はいずれも先頭車のものです。
 写真上は417系国鉄仕様、下は417系・717系共通でJR化後に変更され1996年頃まで見られたエンジ系(塗料は自家調合)でまとめています。

 その他室内配色は壁および貫通扉がクリーム1号、ドアは銀色で表現しました。

 最後に窓ガラスですが、ユニットサッシはキハ47より、また戸袋窓は115系から捻出しています。


6.組立

 各部品とも切継ぎの手を加えているため組み立てには神経を使いますが、種車と比較してもそれほど構造は変えていないため組み立て自体はそう難しくないと思います。
 床下の固定には種車の窓ガラスから切り出したツメ用のくぼみ部分を流用しています。少量のゴム系ボンドで仮止めをした後、瞬着で固定します。瞬着を流しすぎて窓ガラスが白化しないよう注意が必要です。



 おわりに・・・

 今回の417・717系の製作は私としてもかなりの高度な技術が必要でした。作業が開始した後も図面や写真と睨めっこの状態が続いたことが多かったのですが、これも楽しいひとときであると思っています。
 なお、この工法は417・717系のほかにも413・713系の製作にも応用出来ると思います。


 <参考文献>
・鉄道模型趣味 No.513(1989-4) 717系  機芸出版社  1989
・鉄道ファン 1978-6  新車ガイド417系お目見え  交友社  1978
・鉄道ファン 1986-6  近郊形電車  新車ガイド413・717系  交友社  1986
・鉄道ファン 1987-12 JR交流・交直流近郊形電車  交友社  1987


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